兵庫県議会公明党議員団の管外調査7か所目として、名古屋大学NIC(ナショナル・イノベーション・コンプレックス)を視察しました。
NICは、大学の研究成果を社会実装につなげる産学官連携の拠点として整備されており、自動運転技術や医療工学、AI、ライフサイエンスなど、未来社会を支える先端技術の研究開発が進められています。大学、企業、行政が一つの空間で連携し、新たな価値を創出する環境が整えられていることが大きな特徴です。
今回の視察で特に印象的だったのは、「移動」と「医療」という、高齢化社会が直面する二つの大きな課題に対して、大学発の研究成果が社会実装へと着実に結びついていることでした。

まず、自動運転分野では、「ゆっくり自動運転」の取り組みについて説明を受けました。
一般的な自動運転が高速走行や完全無人化を目指すのに対し、この技術は時速20キロ以下の低速で走行し、人や地域社会と共存することを重視しています。人口減少や高齢化が進む地域では、運転免許返納後の移動手段の確保が大きな課題となっています。病院や買い物、地域活動への参加など、移動は単なる交通手段ではなく、健康や生きがい、地域とのつながりを支える重要な基盤です。
私は今定例会の一般質問において、高齢者の外出機会確保と介護予防について取り上げています。
高齢者が住み慣れた地域で元気に暮らし続けるためには、医療や介護サービスの充実だけでなく、「自分の力で外出できること」が極めて重要です。買い物や通院、地域活動への参加は、身体機能の維持だけでなく、人との交流や生きがいづくりにもつながります。

一方で、運転免許返納後の移動手段が十分に確保されていない地域も少なくありません。外出機会の減少は、フレイルや認知症の進行、社会的孤立につながることも指摘されています。
今回視察した「ゆっくり自動運転」は、単なる移動技術ではなく、高齢者の健康寿命の延伸や地域コミュニティの維持を支える社会基盤として大きな可能性を感じました。今後は兵庫県においても、中山間地域や交通空白地域における新たな移動サービスのあり方を研究し、高齢者が安心して暮らし続けられる環境づくりを進めていくことが重要であると感じました。
そして、もう一つ強く印象に残ったのが、名古屋大学発スタートアップによる「尿でがんリスクを調べる技術」です。
説明では、「がんの早期発見は始まりに過ぎない」という言葉が紹介されました。
従来の医療は、病気が見つかってから治療することが中心でした。しかし、これからの医療は、病気になる前に兆候を捉え、予防や早期発見につなげることが重要になります。
尿を用いた検査は身体への負担が少なく、自宅でも実施できる可能性があります。将来的には、病院に行かなければ受けられなかった検査が、より身近なものとなり、多くの命を救うことにつながるかもしれません。
高齢化が進む日本において、健康寿命の延伸や医療費の適正化は重要な政策課題です。病気になってから支える医療だけでなく、病気になる前に予防し、早期発見によって重症化を防ぐ医療へ。こうした発想の転換こそが、これからの社会に求められているのではないでしょうか。
今回の視察を通じて感じたのは、大学が単なる研究機関ではなく、新たな産業や雇用を生み出し、地域課題を解決するイノベーションの中核となっていることです。
兵庫県にも、神戸医療産業都市をはじめ、理化学研究所や県内大学、世界に誇るものづくり企業など、多くの強みがあります。重要なのは、それぞれが個別に活動するのではなく、大学・企業・行政が連携し、研究成果を社会実装へと結び付ける仕組みをさらに強化することです。
「移動を支える自動運転技術」と「健康を支える予防医療技術」。
今回の視察では、最先端のテクノロジーそのものではなく、その先にある「人の暮らしを支える未来」を見ることができました。

兵庫県においても、大学発のイノベーションを地域の成長と県民生活の向上につなげる取り組みを後押しし、誰もが安心して暮らし続けられる社会の実現に向けて取り組んでまいります。
現場の声を県政へ。
今回の学びを、今後の政策提言に生かしてまいります。